下流老人-一億総老後崩壊の衝撃 ざっくり書評

こんにちは、おっつーです。

今回は「下流老人-一億総老後崩壊の衝撃」という、朝日出版から出されている新書を読ませていただきました。 

 

下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 (朝日新書)

下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 (朝日新書)

 

 

この本は2016年の新書大賞で第5位に選ばれており、また2015年の流行語大賞にも「下流老人」としてノミネートされています。

 

正直、私は今まで貧困は「先天的な病気や障害などを理由としない限り、本人の努力や計画性の欠如が原因なのではないか??」という考えを持っていました。(この本を読んだ後も少しはもっていますが…)

そんな意識を変えなければ…という甘い(?)考えから本書を手にしました。

 

では、さっそく「ざっくり書評」に入っていきたいと思います!

 

今回のキーワードは、

①下流老人とは何か。

②下流老人が増えることによる影響は何か。

③下流老人にならないために、下流老人を増やさないために何を行う必要があるのか。

です。

 

①下流老人とは何か。

 

著者である藤田さんは下流老人を

生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」

と定めています。

具体的には

1-収入が著しく少「ない」

2-十分な貯蓄が「ない」

3-頼れる人間がい「ない」

という以上の三つの特徴を持つ高齢者だと定義しています。(ない、にかっこ付けしているのは、藤田さんが「ない」という言葉を強調しているためです。)

一つずつ見ていきましょう。

 

1-収入が著しく少「ない」について

世帯収入が著しく低く、普通の暮らしが営めないという事です。 

 

2-十分な貯蓄が「ない」

著者は本書で「平成26年総務省の「家計調査報告」によれば、高齢期の2人暮らしの場合の一か月の生活費平均は、社会保険料などをすべて込みで約27万円。」

「貯蓄額が300万円では約4年で底をつくことになる。仮に1000万円あっても、14年弱しかもたず、最終的に貧困に陥る可能性があるのだ。」と述べています。

また内閣府の「平成26年版高齢化社会白書」によれば、世帯の高齢期への経済的なそなえについて足りていると考える人たちは、4割もいきません。

 

3-頼れる人間がい「ない」、です。

これは想像しやすいと思いますが、要は「社会的孤立の状態」を指します。

友達も家族もいない、一人っきりの状態…いやですね。

 

②下流老人が増えることによる影響は何か。

 

下流老人が増えることによって何が問題なのか。

「私は下流じゃないし、今後も下流にはなりません!」

そういう問題ではないと、筆者は言っています。

では、具体的にどのような問題があるのでしょうか。

1-親世代と子ども世代が共倒れする

2-価値観の崩壊

3-若者世代の消費の低迷

4-少子化を加速させる

 

身内の誰かが、下流老人になったと仮定しましょう(この時点で「頼れる人がいない」状況ではないと思いますが…笑)。

その子どもは、親を扶養しなければなりません。しかし、親の収入はあてになりません。それに加えて、親の病気の療養費や自分の子どもの教育費なども出費しなければなりません。

そうなると、更に生活は厳しくなっていきます。そうなるとその先は、「親世代と子ども世代が共倒れする」という状況が、起こります。

そのような事態になると、「高齢者が邪魔だ!」という考えになる人も出てきます。そうなると、どうでしょうか。高齢者が、尊敬されなくなってしまいます。すると、みんなが「健康が一番」「長生きは素晴らしい」と考えていたものが壊れる、要は「価値観の崩壊」が起こります。

そのような高齢者の姿を見て、若者はどのように思うのでしょうか。「ああはなりたくない!」と思うでしょう。そのように思った若者は、将来のために貯蓄するようになります。「若者世代の消費の低迷」が起こり、ひいては日本経済の発展を阻害する要因にもなり得るのです。

すると若者は、貯蓄と同時にそれ以外のリスクも減らしたいと考えます。そのため、多大なお金がかかる子どもは作らない、という状況が起こります。その結果が「少子化を加速させる」ことになります。

 

③下流老人にならないために、下流老人を増やさないために何を行う必要があるのか。

 

個人としては

1-今の時点で、生活保護社会保障制度正しく知っておく

2-今のうちから病気や介護に備える

3-何よりもまずプライドを捨てる

4-いくら貯めるべきか知っておく

5-地域のNPO活動にもコミットしておく

6-「受援力」を身につけておく

ということを行なっておく必要があります。

 

まず生活保護自体をしっていなくては話になりません。そのため、生活保護費を受給するまでの基本的な流れと受給要件等、それと同時に社会保障を受けるのは「権利」だということも頭に入れておく必要があります。

また、医療制度についても、「無料低額診療事業」などの医療費の支払いが困難な人のための制度も調べておかなければならない。

しかし、そのような制度があっても本人が受ける気がないと意味がありません。生活保護は正当な権利であり、何も恥ずかしいことではないという意識を持ち、支援を受けやすい性格の人間にならなければなりません。

それに加えて、老後に必要な貯金額のシュミレーションを行い、孤立化を防ぐために地域のNPO活動に参加したりなど「プライベート・コミュニティー」を充実させておく必要もあります。

以上が個人としては行うべき事です。

 

では、国として、地方自治体としてはどのようなことを行う必要が、あるのでしょうか。

1-貧困対策基本法の法制化をし、国民の防貧や救貧対策を国家戦略として強化する

2-生活保護制度をわかりやすく、受けやすく

3-生活保護を保険化する(提案)

4-生活の一部をまかなうものとして、生活保護を分解する(提案)

5-家賃補助制度の導入

6-若者の貧困問題に介入

 

下流老人問題が今後も進行する理由の一つに、若年層や子どもの貧困があります。高齢者になる前から貧困なのですから、下流老人になってしまうのは当然ですね。そのためにも、国家をあげて貧困に取り組まなくてはなりません。

下流老人になってしまった人に対しても対策を取らなくてはなりません。生活保護という制度を受けやすく尚且つわかりやすくする必要があります。日本人は生活保護に対して強い恥辱感があり、また生活保護費ならびにそれに関係する他の制度もわかりづらい、という問題があります。下流老人となってしまった人のためにも、もっと受けやすく、わかりやすいものにしなくてはなりません。

また、新しい試みとして「生活保護の保険化」、「生活保護制度の分解をし、社会手当化する」ことも行うべきです。

生活保護を保険化することにより、年金や介護保険と同じように、「保険料をはらったのだからサービスを受けて当然」という意識を持ちやすくなります。

また多くの下流老人は、生活保護のうち、一部でも別枠で補助してほしい、と考えている人が多い現状です。そのため、生活保護制度を分解し、より受給しやすいように「社会手当化」していくことも、改善に繋がります。

 

 以上が本書のざっくりとした要約です。

 

この本で述べられている「申請主義の脱却」については私は激しく同意します。というのも、生活保護の不正受給が非常に問題になっているからです。

厚生労働省によると、平成26年度の不正受給件数は、4万3230件になるそうです。

……客観的に、この数字を見ただけで判断すると、生活保護をバッシングしたくなる気持ちもわかります涙。

申請主義を脱却することにより、お役所の方からアクションをかけることができるので、申請者が暴力団などと繋がる前に申請させることができると思います。

 

また、私がこの本で触れてほしかったのが「生活保護の不適正な利用方法」についてです。

一昔前に、一部の生活保護受給者が受給金をパチンコにつぎ込んでいる、というニュースが話題になりました。

お金の使い道は、被保護者の自由ですので、パチンコは禁止されていません。(条例で禁止している地方自治体も増えていますが。)

しかし、著者からすれば、受給するのが「権利」だとすれば、使い道を自由に決めるのも「権利」だとされてしまうのではないか、とも思います。

適正な利用を促す制度を作ったり、「適正利用してるぞ!」という広告を行わない限り、このような側面から生活保護に対して疑いを持つ人は、意識を変え辛いと思います。

 

中々意識というものは変えずらいと思います。正直、私も実際に現場を見てみないと変わらないと思います。皆さんはどうでしょうか。

それではまた!

 

 

マーチ博士の四人の息子

記念すべき第一回目の投稿です。

今回紹介するのは、「ブリジット・オベール/マーチ博士の四人の息子」です。

元旦にも関わらず、書店で何かおもしろそうな本ないかなー、と探していたところ出会いました。笑

暇だったんです、すいません笑

帯のあおりに惹かれ購入。そこには「表紙からすでに仕組まれたトリック。」こちらがその表紙です。

 

マーチ博士の四人の息子 (ハヤカワ文庫HM)

マーチ博士の四人の息子 (ハヤカワ文庫HM)

 

たしかになにか意味ありげな表紙笑

赤いテーブルに四人が肘をついている。何かこちらをうかがっている様子。これは期待できる!

しかしこの本を読んで第一の感想は…期待させすぎ!笑ということでした。。

作者のブリジット・オベールはフランス生まれで、「悪童日記」の作者であるアゴタ・クリストフも注目している作家さんです。

本作品は彼女のデビュー作であり、以降ホラーやハードボイルドなど様々なジャンルの作品に挑戦しています。

この本を手に取るまで彼女の名前は知らなかったので、お恥ずかしながら、彼女の作品はもちろん初めてです。笑

内容的には、「家政婦は見た!」をイメージしてもらえば十分かと思います。

マーチ家のメイドであるジニー・モーガンが、ある日日記を発見します。

その内容は変態的であり、なおかつ書き手自身が殺人者であることをその日記内で告白しています。

書き手はマーチ博士の四人の息子の内のだれか。

しかし、書き手は自分が誰なのかを明示していません。

ジニーは誰なのかを探ろうとしますが、犯人である書き手に気づかれ、やがて殺害の対象となり…

おおまかな内容は以上です。物語はジニーと、犯人である殺害者の日記形式の対話で進んでいきます。

それでは「ざっくり書評!」に入ります。

この本を読んで感じた点は三つあります。

まず一つにタイトルが内容に生かされてないな~と感じました。

「マーチ博士の四人の息子」

なんだか惹かれちゃいますよね笑

なにかサイエンス要素があるのか?四人の息子が複雑にからみあい、巧妙なトリックをみせてくれるのか?

期待させてくれます…が!!!

博士要素もなければ、正直に言って四人の息子も個性はそれほどありません(笑)

二つ目は…内容がありきたりで、犯人がわかりやすい!ということです。

ミステリー好きの人には、犯人が中盤にはわかってしまうのではないかと思います。

マーチ博士には息子はかつて5人いた、そして殺人者の日記で自分は存在しないと明記…

この時点でカンの良い人は5人目の息子が生きており、そいつが犯人では…と考えると思います。
(正式に言えば家族全員が共犯者なので、皆犯人と言えるのですが…笑)

そして最後にこれが一番感じたことなのですが…物語の流れが冗長!ということです。

先ほども述べたように、話はジミーと犯人の対話的な日記形式で進みます。

そこはいいのですが…基本的に話の転換が少ないです。

大体が犯人の精神異常者ぶりの強調に終始しているなー、と感じました。

そのため、読む人によっては途中で飽きてしまい、最後まで見ないという方もいると思います。

四人の息子それぞれが重要な役割を果たすわけでもなく、だからといって複雑に絡み合うわけでもない。

正直、最後らへんは「早く終わらないかなー…」と思ってました。(んじゃ読むな!という話なのですが…)

それでは、また!

初めまして!

 はじめまして、おっつーです。

本と映画と旅が大好きな20代です。

このブログでは、主に「ざっくりとした書評」をテーマとして書いていこうと思っています笑

自分自身の備忘録として、また誰かの参考になれば…という思いからブログを開設しました。

あくまでも、本好きの素人が書いた書評ですので気軽に読んでください!

わかりやすい、硬くない書評を心掛けます。

次の読書の参考にしていただくと嬉しいです。

ジャンルに偏りがあるかもしれませんが、ご了承下さい。

たまに映画についても書きたいと思っています。

定期的に更新します。