「敵」とはいったい何なのか-「敵」
今回ご紹介するのは、筒井康隆氏の「敵」です。
筒井康隆さんと言えば、多くの人は「旅のラゴス」が一番に思い浮かべると思います(一昨年、昨年あたりから本屋でみかけるようになりましたよね)。
あまり知られていないですが、「時をかける少女」」も筒井康隆さんが原作者です。
筒井康隆さんは、小松左京・星新一と並んで「SF御三家」と呼ばれています。
私のイメージでは、「ゴリゴリなSF作家というよりも、「現実(と見せかけている)の中に非現実を混ぜるシュールなSF」という感じです。
ざっくりとしたあらすじ
妻に先立たれ、独り身である元大学教授の渡辺儀助は、自分自身の趣味を楽しみながら残りの余生を過ごしていた。そんなある日、趣味の一つであるチャット内のメンバーの一人が「敵です。皆が逃げ始めていますー」とのメッセージを流す。最初は現実味にないものであったが、徐々に様子が変わっていく。
今回読ませていただいた「敵」ですが、非常に不思議で、人によっては読みずらい小説となっています。
というのも、話の内容が、主人公である「渡辺儀助」の妄想か、はたまた現実なのか判別しにくいためです(よく読めばわかるのですが…)。
物語の大半は主人公である「儀助」の人柄や趣味等についての細かい描写です。「ここまで書くか!?」っていうほどしつこく書かれています。
途中までは現実的ですが、「敵」が現れてから少しずつ変わってきます。現実と夢の境がわからなくなってくるのです。ここから少し読みづらくなってきます笑。
では、気になるところの、この物語の主題となる「敵」とは何なのでしょうか。
残念ながら、「敵」に関する記述が少ないため、これ!といった回答はもちろんないです。
私的で勝手な憶測ですが、「敵」とは「認知症」なるものの事を言っているのではないかと思います…。
「認知症」とは、過去の記憶を失ったり、時間や場所、自分が置かれている状況
を正しく認識できない等の症状が発症することです。
しかし「認知症」だと判断する人は、「認知症」になった人からみればまったくの他人です。
もしかしたら、「認知症」になった人からすれば、現実と非現実の区別つかず、そのため記憶間違いを起こしているだけなのかもしれません。
「敵」とは、現実と非現実の壁を壊すものであり、いわば「病気」のことでは?と私は思います。
全体的に見れば読みづらいですが、SF好きの私にとっては、好きなジャンルでした。
みなさんは、「敵」は一体何だと思いますか。